大原

京都市の市街地から高野川を遡ること十数キロにある山里。平安時代初め比叡山延暦寺の修行僧らの修行地や、天台声明の修練地となるとともに、都の喧騒を避け、山里に隠棲する皇族や貴族らの隠棲地でもあった。紺のかすりに手っ甲、脚絆(きゃはん)姿で頭に薪や野菜などの荷をのせた大原女(おおはらめ)たちが、かつては行き交っていた。
周辺には三千院や寂光院など見どころも多い。
三千院

伝教大師・最澄が開基したといわれる寺で、天台宗五門跡のひとつ。梶井門跡、梨本坊とも呼ばれ、最澄が788(延暦7)年に比叡山の根本中堂を創建したのち、叡山東塔の梨の大木の下に一宇を建てたのが起こりとされている。
本尊は伝教大師自刻といわれる薬師如来像。境内は自然の傾斜を活かして建物を配置され、池泉回遊式庭園の有清園(ゆうせいえん)は、苔の緑が覆う。秋には見事な紅葉に彩られる。この庭園の一角に本堂の往生極楽院が建っている。
もみじと苔に包まれた有清園と往生極楽院
寂光院

平家物語で知られる平清盛の娘である建礼門院が、壇ノ浦で安徳天皇と入水し、源氏の手で救われた後、余世を送った寺。
6世紀に、聖徳太子が用明天皇の菩提のために創建したといわれる尼寺だ。本堂は数年前に放火されて消失し、現在再建中(2003年12月に完成予定)
もみじの名所として有名だが、初秋には境内の池の縁に秋海棠の花が咲く。薄紅色の花が水面近くまで垂れ下がり秋風に揺れていた。
常林寺

1573(天正元)年、念仏専修僧魯道(ろどう)によって開創された浄土宗の寺院。ここは若き日の勝海舟の京都における宿坊でもあった。
日中は門が開け放たれ、自由に入ることができる。「萩の寺」として有名で、境内は立錐の余地もないほど深々と萩に埋まり、紅白の花をつけた花枝が地面にまで枝垂れかかっていた。
梨木神社

京都御苑の東に隣接する神社で、創建は1885(明治18)年。維新の功労者として知られる三条実萬、実美親子を祀る。京都の代表的な萩の名所として有名。境内には、京都三名水の一つ「染井」の水が湧き、大勢の人が水を汲みに来ている。
参道に沿って数百株の萩が植えられていて、秋の訪れとともに紅白の萩が咲き始める。9月15日には、萩の風情を詠む句会があり、萩にたくさんの短冊が結わえられていた。
アクセス

三千院、寂光院 京都バス「京都駅前」、「四条河原町」、「三条京阪」などから乗車、「大原」下車。
常林寺 京阪電鉄「出町柳」駅下車すぐ。
梨木神社 市バス「府立医大病院前」下車、徒歩5分。